金ナノインク
金ナノインクの用途
高い安定性を求める配線やデバイス電極として
C-INK金ナノインクは、銀よりも安定性が必要な用途で多く用いられています。日本国内だけでなく、海外の研究機関でも金ナノインクをご使用いただいており、多数の研究成果が報告されています。金ナノインクを使用した研究例を3点ご紹介します。
金ナノインクを用いた研究事例
1
塗布型有機デバイス用電極
金は高い安定性とキャリア注入効率をもち、有機半導体デバイスの研究では欠かせない素材です。C-INK金ナノインクは、インク中の不純物含有量が極めて低いため、塗布で電極材料として用いる際に動作効率を妨げにくいという特性があります。
以下の図は、C-INK金ナノインクを電極、半導体としてカーボンナノチューブを用いた塗布型 FET (電界効果トランジスタ; Field Effect Transistor)デバイスです。動作電圧 1V 以下で、70 cm^2/Vs もの高い移動度を実現しています。こうしたデバイスは、塗布型とされているものでも真空蒸着等で電極を形成するのが一般的です。C-INK金ナノインクは電極を塗布で形成することが可能なため、『完全塗布型デバイス』を実現できるのです。
2
選択的表面処理を用いた微細配線形成
C-INKナノインクは、水を主溶媒とした塗布材料です。通常、ポリイミド等の樹脂基板への印刷はインクが表面ではじかれるため、ファインな印刷が難しいです。こうした濡れにくい樹脂基板等に対して、限られた部分のみに紫外光を照射することで、選択的に親液処理を行うことが可能となります。この処理を行うことで、下図のような線幅0.6 μm もの微細配線が形成可能です。
近年では、このように塗布形成した微細配線を3次元化し、ビアホールにより導通させることも可能となっています。このような選択的表面処理による配線形成を行うには、インク物性を最適化することが必須です。C-INKでは、お客様の用途に合わせたインクのカスタマイズが可能です。詳しくは、お問い合わせください。
3
生体適合デバイス
生体に接触する用途では、アレルギー反応が出にくい金のような貴金属が有用です。
生体親和性のある樹脂基板に、C-INK金ナノインクでコイル形成を行い、非接触誘導加熱で癌の温熱療法を目的とする研究事例が報告されています。この研究では、C-INK金ナノインクをインクジェット印刷し、わずか厚さ7μmの生体適合デバイスを実現しました。
引用論文:Adv. Funct. Mater., 31, 2102444 (2021).
他の応用事例では、血糖値センサー用の電極を金ナノインクで形成した場合、従来用いられてきた金電極と同様の動作が可能であることが明らかとなっています。これは、C-INKナノインクが極めて金属純度の高いインクであり、動作を妨げる有機不純物の含有量が非常に少ないことによる効果です。